説明
これ以上ないほどシンプルなスカートを作りました。シンプルですが、ファストファッションの対極に位置する1点です。
生地はインドネシア、ジャワ島の端っこにある小さな小さな村で細々と織り継がれているテヌンと呼ばれる木綿布。綿花を栽培し、手で紡ぎ、地機で織る布です。インドのカディとほぼ同じですが、インドでは既に殆どが機械紡績の糸に取って代わられていることを思えば、このテヌンははるかに原始的で、人が布というものを生み出した頃からほとんど変わっていないのではないかとすら思います。
さすがにもう織り手が激減しています。若い人は村を出て行くし、中年世代は少しはマシな収入となるバティックの仕事に就いているのを現地で見聞きしました。つまりお年寄りしか織っていないのです。あと少しの時間で、消えてしまうものだと思います。絶滅危惧種のような布です。
インドネシア語はまったくできませんし、宿の人に訊いてもバスや乗合のような交通機関がないということで、宿の人の車に乗せてもらって村に行きました。村というか、集落の集合体のような場所でした。そこそこ大きな織元も複数ありましたが、村を巡っているとあちこちで織っている人に出会うことができました。
残念ながらその人たちから購入することはできません。彼女たちは糸を買うお金がないので、提供された糸を織り納める契約で織っているからです。そんな人たちに何人も会いながら、ようやく1反売れるという家にたどり着きました。家の軒下で、老婦人が布を織っていました。柄の布も織れるようで何反か見せてくれましたのでぜんぶ買いました。買うことで続くものがあるのなら買う、のが主義です。
村を回って今回手に入れられたテヌンはわずか数反。あればあるだけ欲しいと思っていましたが、それはかなわぬ望みのようでした。
その、村の老婦人たちが丹精込めて織ったテヌンに、おらほ=わが家で作っている藍をかけてみることにし、出来上がったのがこのスカートです。わが家の藍も、テヌンに負けず劣らずの手間を経て染め場に鎮座しています。これほどの手間をかけて建てる藍を、何にかけたら見合うのか、長年考え続けていますが、このテヌンならば見合うを通り越してなお先の何かであろうと思います。
生地の状態で5度染め重ね、スカートに仕立てました。裾や脇の縫い代の押さえは、ミシンで叩くのがしのびず、手縫いで仕上げています。
着丈 68cm
身幅 60cm
ネップ、織りムラが多少ありますが、生地の特性とご理解ください。
細かい繊維のようなものが取り切れていないかもしれません、これは藍の葉です、着用したり洗ったり、という繰り返しの中で取れて行きます。現状気になるほどにはついていません。
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